第4章 人生万事塞翁が虎
「経営が傾いたからって養護施設が児童を追放するかい?
大昔の農村じゃないんだ」
『そもそも 経営が傾いたのなら一人二人追放したところでどうにもならない。半分くらい減らして他所の施設に移すのが筋。』
「二人共何を 云って──」
顔を上げる敦の瞳が月明かりに留まる
「君が街に来たのが2週間前」
『虎が街に現れたのも2週間前』
ドクン
月明かりの下敦の身体が脈を打つ
「君が鶴見川べりにいたのが4日前」
『同じ場所で虎が目撃されたのも4日前』
ふわり とコンテナから降りる猗憐
「国木田君が云っていただろう。《武装探偵社》は異能の力を持つ輩の寄り合いだと。巷間には知られていないがこの世には異能のものが少なからずいる」
「その力で成功する者もいれば──」
『力を制御できず身を滅ぼす者もいる』
『大方 施設の人は虎の正体を知っていたけど君には教えなかったんでしょ』
「君だけが解っていなかったのだよ」
「君も«異能の者»だ」