第4章 人生万事塞翁が虎
「貴様«人食い虎»を知っているのか?」
「あいつは僕を狙ってる!殺されかけたんだ!
この辺に出たんなら早く逃げないと──」
ビタンッ
「・・・ッ」
「云っただろう。武装探偵社は荒事専門だと。」
国木田は敦の足を払い倒し床に押さえつけ、続けた
「茶漬け代は腕一本か、もしくは凡て話すかだな」
「··········っ!」
「まあまあ国木田君。君がやると情報収集が尋問になる。社長にいつも云われてるじゃないか。」
「······ふん」
『はい、お水。痛くない?大丈夫?』
「は、はい·····」
敦の背を擦り乍ら席に着かせる
「それで?」
「·······うちの孤児院はあの虎にぶっ壊されたんです」
「畑も荒らされ 倉も吹き飛ばされて──死人こそ出なかったけど貧乏孤児院がそれで立ち行かなくなって口減らしに追い出された」
"お前が──"
"お前の所為だこの穀潰し"
"何故です 僕は何も──"
"この院に穀潰しは要らぬ"
"否 天下のどこにもお前の居場所は
ありはせん──"
"この世の邪魔だ──皆の邪魔ゆえ
疾くと消えよ この世から消え失せるがいい"
───
「··········」
「······そりゃ災難だったね。」
ピトッ
『♪』
ニコニコし乍ら敦の横にぴたりと座り頭を
撫でる
赤面する敦
『頑張ったね、偉い!大丈夫!私は敦くんを否定しない!居てもいいの。いいんだよ···』
「あ、ありがとう、ございます。」
然し、彼女の表情は何故かハッキリとしない上に潤んだ視界で余計に分からなかった
「それで小僧。「殺されかけた」と云うのは?」
「あの人食い虎──孤児院で畑の大根食ってりゃいいのにここまで僕を追いかけてきたんだ!」
──孤児院を出てから鶴見川あたりを
ふらふらしてた時─
─割れた姿見に写った敦と後ろに──