第4章 人生万事塞翁が虎
「おい 太宰。俺たちは恵まれぬ小僧に慈悲を垂れる篤志家じゃない。仕事に戻るぞ。」
「お三方は······なんの仕事を?」
「なァに·······探偵さ」
キリッとし云う太宰にぽかんとする敦
チッ
「探偵と云っても猫探しや不貞調査などではない。
斬った張ったの荒事が領分だ。」
「お、女の人···も、ですか?」
敦は視線を猗憐に遣りながら云った
「ああ、そうだ。因みに此奴は強い。舐めてると痛い目をみるぞ。」
「は、はぁ」
ニコニコ微笑む猗憐を見遣る
(こんなに綺麗な人が·····?)
「異能力集団《武装探偵社》を知らんか?」
──《武装探偵社》聞き覚えがあった
曰く 軍や警察に頼れないような危険な依頼を専門にする探偵集団─ ─
昼の世界と夜の世界 その間を取り仕切る
薄暮の武装集団
なんでも《武装探偵社》の社員は多くが異能の力を持つ«能力者»と聞くが──
「あの鴨居頑丈そうだね······たとえるなら人間の体重に耐えられそうな位」
「立ち寄った茶屋で首吊りの算段をするな」
「違うよ 首吊り健康法だよ。知らない?」
「何、あれ健康にいいのか?」
「まず頑丈なネクタイを用意しましょう」
(本当かなあ······)
『嘘よ。』ヒソッ
「あ、はい。ですよね。」
「そ···それで探偵のお三方の今日の仕事は」
「虎探し だ」
「·······虎探し?」
「近頃街を荒らしてる«人食い虎»だよ。
倉庫を荒らしたり畑の作物を食ったり好き放題さ。
最近この近くで目撃されたらしいのだけど──」
ガタッ
椅子からずり落ち四つん這いで方向を変える敦
「ぼ、ぼぼ 僕はこれで失礼します。」
シャカシャカ
「待て」
去って行こうとした敦だが、国木田に首根っこを掴まれ空を這う事になってしまった
「む 無理だ!奴──奴に人が敵うわけない!」