第4章 触手*
身体がだるい。
ぐったりと寝台に横たわりながら、小さな鉄格子の窓から月を見る。
聖処女は男の精液では決して懐妊しない。
処女受胎、もう覚えていない母も神性に犯されて私を身篭った。
聖遺物を食べたり身体に取り込むと、その取り込んだ側も神に似てしまう。
私に吐精される行為ではなく、私を根元から穢すようなもの……
悪魔の精液、異端の体液、そんなようなものが注がれると私は妊娠するのだ。
聖処女は神性を帯びている、ふつうの人間は受け付けない。
それだというのに、毎日のように違う男性に抱かれて、しかも全員に射精されて、私の身体がなんだかだるい。
寝不足のようなだるさと身体のほてりに包まれて、起き上がる気になれなかった。
少し目を閉じて自分の寝息が耳打ちする……そんな静かな夜も良い。
そう思っていたら、何か湿ったものが床を這うような音が微かに聞こえた。
––––くち……ぐちぐち……
「え……? な、なんでしょう……」
目を開けて辺りを見回す。
あいにくはめ殺し窓からくる月光しか明かりと呼べるものがないため、部屋は青暗く、あまり分らない。
私はほてった身体をなんとか起こして、暗闇をうかがう。
––––ぐちぐち……
足元を照らす月明かりに、影が落ちた。
驚いてみあげると……そこに、いたのは。
「ひ……ッ! か、怪物っ!」
聖処女は、ふつうの人間を受け付けない。
ゆえに天敵は同じく神性を帯びたものか……あるいは、異端。
そこにいたのは、花型のような星型のような、そんな身体に触手をつけた怪物だった。