第1章 一
「…………あのさぁ」
先輩が静かな声で問い掛ける。
「泣くくらい悔しいくせに、何でその意地は通すの?」
「………っ」
「誰かに妬まれる才能を捨てるな。誇りに思え!」
捨てるくらいなら私にくれ、と優しく笑った。
「…せんぱい……っ」
「あんたは、コンペの事だけ考えな。有給、丸々あったよね」
「…あります、けど……」
きっと、主任は通してくれない。
今までも、何回か申請したことがあったのに、全て無かったことにされた。
「お局なら通さないだろうね。だけど私、あいつより上にちょっとしたコネがあるから、申請は通すよ。有給取らせないのはコンプライアンス違反になるからね」
悪戯っ子みたいに、ニカッと笑う。
誰も主任には逆らえないのに、先輩大丈夫なのかな……立場とか…
「私の立場が心配ですって顔してるぞ、。まだ分からんかぁ、このバカちんがぁ~」
「……ぷっ」
ボブの髪を耳に掻き上げながらそのモノマネはズルい。吹き出すしかないよ。
「やっと笑ったか。僻み根性丸出しのやつらに負けるじゃない。あんたには、今すぐにでもやらなきゃいけないことがあるでしょ?」
私がコンペにあんたを連れていく。
あんたは、あんたにしか出来ないことをしな。
他の誰でもなくが選ばれたのは、神様のイタズラでも偶然でもない、実力だよ。
私は、コンペでの作品が見たい。
生き生きと、堂々と舞台に立つが見たい。
こんなに成長しました先輩!ってところ、私にみせてくれてもいいでしょ?
さて、ここで問題です。
「今のあんたに、やっかみを気にしてる暇があるの?」
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