第1章 一
最寄りの入り口から階段を駆け降りる。1歩降りるたびに、構内に閉じ込められた冷気が強くなる。
地下鉄に乗り込むと、ポケットのスマホが震えた。
「……!」
『、あんた何やってんの?』
………………ス ス ス ス ……
――せんぱい――
ブー
『話しは聞いた。今から会おう』
「ちょ…っ、今からって…!」
ススススススス…
――もう電車に乗りました――
…ブー
『追いかけるから。ん家から最寄りの駅前にファミレスあったでしょ?先入ってて』
「……いやいやいや…」
言い出したら聞かないタチの先輩に、いくら来ないでと言っても聞いてくれない。
「……はぁ…」
これ以上、気が重たいのは勘弁してほしい…。
でも言い出したら聞かないしな…。
乗り換えのアナウンスは、さすがに気分まで切り替えてくれなかった。