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ベールは裂けない *イケメン戦国*

第1章 一



恥ずかしくてなかなか脱げずにいたけれど、胸元から長く垂らした手拭いで前を隠して、腰に手拭いを撒いた政宗の後ろから行くことにした。

立て付けが悪いのか、少し重そうに扉をスライドさせると、湯気の暖かさと外気の少し冷たい風とが同時に滑り込んでくる。


「中と外、どっちがいい?」

「え?」


斜に立ち直した政宗の向こう側は、簡素な竹垣で内湯と露天に分かれていて、湯面からフワフワと湯気が立ち上っている。


「えっと…じゃあ……外!」

「よし。滑って転ぶなよ」


まだ濡れていない床は浴槽と同じ木材で出来ていて、嫌なヒンヤリ感がない。チャプチャプとお湯が滴(したた)る露天湯は、乳白色だ。

縁に置いてある桶で汲み出したお湯を体に掛け、爪先からゆっくり湯船に滑り込むと、人肌より少し熱いお湯がとても心地よかった。


「ふぅ~~……」


そんなに座高が高くない私には、肩まで浸かれるちょうどいい深さだ。

政宗も同じように入ってきたけれど、浸かれたのは脇の辺りまでで、肩が丸見えだった。


「いい湯だな」

「そうだねぇ…」


温泉、ていうだけで疲れが吹っ飛ぶのは本当に不思議だった。柔らかい泉質にどんな効能があるのか分からないけれど、極上の気分になっているのは間違いない。


ゆったり、のんびり。
そんな言葉がしっくりくるほど温泉を堪能した私たちは、脱衣場の灯りが本格的に漏れ出てくる前に上がった。
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