第1章 一
着替えた浴衣はサラッと薄く、火照った熱が程よく逃げていって、鼻や額の生え際が汗ばむ暇がない。
遠くまでも続く夜の空にポツポツと空いた星の穴。目を凝らすと一等星ほど瞬いているのがよく分かる。
子供の頃から、それが天蓋(てんがい)に空いた穴で向こうから誰かが覗いてるように思えて、いったい誰がいるんだろうって気になって、何度も見上げているうちに、天体が大好きになった。
「…ぁ」
「?どうした?」
………気のせい…かな?
「……いや…」
「…?」
オリオン座の中に知らない星がある…?あんな星、なかったはずだけどな……
でも……
「…………」
…………やっぱり知らない、あんな星…
あんなに輝いてたら気付かないはずないし、今より空気が汚れてる現代にいても見落とすはずない。
「……じゅみょう…だった……?だから、見えなかった………?」
「?」
ハッと政宗を見上げると、訝(いぶか)しげな視線とぶつかった。……やっちゃった…。夢中になると周りが見えなくなっちゃうやつ……。
「寿命って?誰か見たのか?」
「ごめんね、誰も見てないよ」
忙しなく辺りに目をやって見えない誰かを見つけようとしている政宗をアワアワと制して、天空を指差した。
「あの星、分かる?」
「…どの辺りだ?」
「そこ、3つ斜めに並んでるでしょ?」
「………あぁ、あった」
「そこから上下に台形を成す位置の星と結べるの」
上の逆さになった台形の、中心より少し右上にある星を指し示す。