第1章 一
荷物を置いて座布団に座ると、お爺ちゃんはゆったりとした動作でお茶を淹れてくれた。
「…粗茶ですじゃ…」
「ぁ、ありがとうございます」
お礼を伝えると、ニコニコしたままそっと頭を下げた。よっこいしょ…と、正座をしたお爺ちゃんは、さっきよりさらに小さくなって、ゆったりな仕草も相まってすごく可愛らしい。
「婆も息災か?」
「お陰さまで、耳はほんのちぃと聞こえなくなっとりますが、まだまだぴんしゃんしとりますわい」
お爺ちゃんは、拳から人差し指と親指を跳ね出して、小さい何かを摘まむような仕草をしながら、私がまだ見ぬお婆ちゃんの現状を政宗に話した。
「なら良い。あとで顔を見に行く」
「そりゃぁ、ありがたや、ありがたや」
今度は小さく音を立てて手を合わせ、スルリスルリ擦り合わせながら、政宗を拝むように背中を丸める。
いや、可愛らしいな………ッッ!!!
見ていて、お話しをしていて、すごく新鮮で和やかな気持ちになるって、今まであったかなと思うくらい、愛しい時間が過ぎていく。
「お仕度はどうされますじゃ」
「前回と同じで頼む」
「はいはい」
よっこいしょ、と立ち上がりながら、婆さまも喜びますわい、どうぞごゆっくり、と言って、ゆったりゆったり部屋から出ていった。