第1章 一
私は、堂々としている政宗とは対照的で薄暗い雰囲気に飲まれて、苦手な驚かし系お化け屋敷のような怖さを感じていた。
通りすぎた誰も居ないハズの部屋の襖(ふすま)がスススと開いて、髪の長い女の人が出てくるとか。
障子(しょうじ)から無数の白い手がバサッと飛び出してくるとか。
足音が付いてくるのに振り返っても誰も居ないとか……
よくお化け屋敷だと『ヒュ~ドロドロドロドロ…』って音を鳴らしてるけど、まさにそれが似合う一軒家に突入するなんて………
ぅわぁ……
あそこ、火の玉が出そうn
「どなたかな…………」
「ΣΣΣΣΣΣΣΣΣΣΣッッッ!!!!」
………もう少しで絶叫するところだった。
何とか叫ばずに済んだものの、心臓がバクバクしてなかなか落ち着かない。
……………あ。
毛が逆立つってこれか。
「爺、いたのか。伊達政宗だ、今日は連れもいる」
「政宗さまでございましたか…それはどうも…」
突然聞こえた声は、鈴がチリンチリンと儚く鳴るようなか細い声で、その姿はどこからどう見ても腰の曲がったお爺ちゃんだった。
「どうした?」
「………いや……だいじょうぶ…………」
政宗に顔を覗き込まれても、まだドクドクしている。耳の中が鼓動でうるさい。
「山菜を取りにいっておったもんでの…おいでになったのが分からなかったんですわい…」
穏やかに優しく喋るお爺ちゃんに案内されて、少し奥まった部屋に着いた。