第1章 一
「。………どうした?」
「…ぇ……?」
「何で泣いてる」
瞬きした瞬間、涙がポロッと落ちる。
すかさず政宗が手を伸ばして、優しく引き受けてくれる。理由が分からなくて、少し困ったような顔をして。
「ぅうん、何でもない」
「……」
心当たり無く泣かれると困る、と困り笑顔でポツリと呟く。涙を拭う手の優しさは少しも変わらない。
「…………きれい、だな…って……」
「きれい?」
「…うん。とても綺麗って思ったの。だから、何か感動しちゃって……」
笑われるかもしれないと思ったら恥ずかしくて、自然と顔が下を向いてしまう。
「何が綺麗だった?」
「ぇ…」
「が何を綺麗と思ったのか、教えてくれ」
「………わらわない…?」
「お前を嘲笑(あざわら)ったことあったか?」
「……ない…」