第1章 一
たすき掛けした政宗の後ろ姿。何度見ても、シルエットからして格好いい。
このままずっと眺めていたい、と思っていたら、政宗がお鍋を持って振り返った。
「おはよう、ゆっくり眠れたか?」
「おはよ、うん、もうグッスリ」
それなら良かった、と里芋の煮っころがしを摘まんでお弁当に詰めていく。
小さい彩りの世界は、やっぱり美味しそうで、キラキラして見える。
、と呼ばれて顔をあげると、プニッと何かが唇に押し当てられた。政宗の右手から細い菜箸を辿って鼻先に滑らせた視線が、焦点を失って景色がダブって見える。
「ん、味見」
里芋だ!
と思うが早いか、匂いで食欲が触発されていたのもあって、パクッと一口で頬張る。
少し濃い目の甘辛さが口一杯に広がる。
歯を立てるまでもなく、舌と上顎で押し潰せるほど柔らかい里芋は、ねっとりとした硬さであっという間に原形を留めなくなった。
独特の粘り気が舌を覆い、何の抵抗もなく歯が通っていく。
これは自分でもわかる。
きっと今、私は
(´ω`*)
こんな顔になっている。
「旨そうで何より」
政宗も、心なしか嬉しそう。