第1章 一
それから、うなされ起きることもなく、穏やかな朝で目を覚ます。隣で寝ていたはずの政宗はもう起きたのか、姿が見当たらない。
「……今日、出掛けるって言ってたよね……?寝過ぎちゃったのかなぁ………」
身支度を整えて部屋を出たところで、女中の名津さんと会った。おはようございます、と挨拶し合うと、政宗が台所にいるらしい事を知った。
「さまとお出掛けなさるからと、張り切ってお弁当を作っていらっしゃいます」
「そうだったんですか」
政宗のお弁当、楽しみだなぁ……。
「ふふふ。お顔に出てらっしゃいますよ」
思わず両手で頬を覆うと、口許に手を添えた名津さんにまた笑われる。気恥ずかしくてどうしようかと思っていたら、政宗さまが台所で待っておられますよ、と告げられた。
政宗に、私を呼んでくるように言いつけられたらしい。
「あ、ありがとうございます……っ」
名津さんに頭を下げて、みっともなくならないように、そそくさと台所へ向かった。