第4章 理性
ポケットから携帯電話を取り出して、ポチポチとボタンを押す。
【明日会えますか?】
そう敦さんに送るメールを打ったが、考えこんで全ての文字を消す。
全ての文字を消し終わると、携帯電話を閉じてポケットにしまった。
明日は先程首領から言われた任務がある。
任務の内容は裏切った組織の潜入任務で、その組織の密輸ルートを掴むことだった。
簡単に相手側の情報を掴める訳ない。
頭の中でどうするか考える。
まずは生きて帰れることを祈る。
それから───
「」
名前を呼ばれた後ろを振り向くと、兄さんがそこにいた。
『兄さん……』
「首領がに、と」
兄さんは持っていた分厚い資料を私に渡した。
多分これは相手組織の情報だろう。
「それから、この資料」
そう言ってまた資料を渡してきた。と言っても、投げ捨てる感じだった。
『これは…?』
私は落ちた資料を拾いながら聞いた。
「貴様が作成した資料だ。しっかり見てみろ。誤字ばかりだ」
『……すみません』
兄さんが言うとおり、誤字が酷くて脱字もしている。
「ちゃんと休んでいるのか?まだ体調が悪いだろう」
『はい…』
誤字が多いのは、体調が悪いせいじゃない。本当は敦さんに会いたい、話したい。ずっとそう思っていて、仕事に集中出来なかったからだ。