第4章 理性
裏切った組織はなかなか手強く、私は深手を負った。
目立たないように、路地裏からポートマフィアのビルに戻る。
少し苦しくなって休んでいた時。
路地裏で一際目立つ、真っ白な人物。
一目見たときに気づいた。
敦さんだって分かった。
会いたい。
そう思っていた願いは叶った。
でもこんな傷を負った姿、敦さんに見せたくなかった。
『敦さん…どうして、ここに……』
「血の匂いがしたから、来てみたら……。異能力のせいか、鼻がいいからさ」
『……そう、ですか…』
「それよりちゃん大丈夫?凄く血が出てる……」
『大丈夫です…このくらい』
マフィアじゃこのくらいの傷なんて、よくある。
「でも一応、診てもらおうよ」
敦さんに心配されたくないから、何度も大丈夫と言い張った。
『……』
「……」
少しだけ沈黙が流れた。
今敦さんに本当のことを言おう。
全部、今のうちに。
敦さんに迷惑掛けない前に。
敦さんのこと大好きになる前に、離れた方がいい。
『……もう会うのやめましょう』
「えっ、ど、どうして?」
私がそう言うと、敦さんは素っ頓狂な声を出して困惑した。
『一緒に居ること、首領にバレたんです。敦さん死ぬかもしれない』
「そんな…僕のことなんかいいよ。またこうやって会おうよ」
『そんなの、無理ですよ…。敵同士なんですよ?こんなこと許されないんです』
「でも…」
『私、人殺しているんです。今日も殺した。明日だって殺す。私が殺されるかもしれない。いつ殺されてもおかしくないんです。それに、私はマフィアだから敦さんとは一緒に居られないです』
「どうして、そんなこと…」
『私は、敦さんに生きて欲しい。……敦さんが思ってるほど私は、私じゃないんです。』
『私は……芥川龍之介の妹なんです。』