第8章 捌
しのぶside
鬼に両親を殺されてからは姉さんと生きてきた。
寸でのところで悲鳴嶼さんが私達を助けてくれて、自分達と同じ思いを他の人にさせてはいけない。と鬼殺隊に入隊する事に決めた。
昔から姉さんは怒ったりしなかった。
一言で言えば優しさの塊だろう、いつもにこやかに笑っていて困った人がいたら手を差し伸べる、そんな人だった。
カナヲの時もそう、綺麗とは言えない当時のカナヲに話しかけ手を差し伸べた。
言葉を交わさないカナヲに銅貨で決めるといいと言ったのも姉さんだ。
私は怒ってばかりだ、そんな私に姉さんは笑った顔が好きだとよく言った。
優しすぎるが故に死の間際まで鬼に同情だってする、私に対してもそう、小柄な私を気遣って遠回しに鬼殺隊をやめた方がいいと言う。
分かっているんです、鬼殺隊の中で唯一鬼の頸を切る事の出来ない剣士だと。
それでも何か方法があるはずと身につけたのが薬学でした。
毒で鬼を倒すことはできる、でも姉さんを奪った鬼には日輪刀だけでは敵わない。
頸を落とせる姉さんですらやられてしまったのだから、姉さんじゃなかったとしても頸を落とせない私が適うわけがないって思いますよね。
鬼なんか大っ嫌いです、大切な人を奪っても自分の保身の為だけに嘘ばかりつきますから。
姉さんの言葉を胸に生きてきましたが、鬼に奪われた命を嘆く声を聞く度に日々怒りが蓄積していくんです。
少しだけ疲れてしまいました。
私の夢は姉さんの言葉である鬼と仲良くすることでしたが、それは竈門くんに任せることにしました。
彼は姉さんのように優しい子ですからきっと成し遂げてくれるでしょう。
そうする事で私の目的も一つに定まる。
凄く悔しい事ですが鬼にも薬学に精通している女がいたんです。
その鬼と共同で調べて私が唯一鬼を倒せる道がみえました。