第8章 捌
でもそれは私の命なしでは出来ないこと。
私が藤の花を摂取し鬼に吸収されるということです。
藤の花は鬼にとって猛毒ですから、私の重量分を摂取したとなると上弦ノ鬼だとしても致命傷にはなるでしょう。
何がなんでも私の命に変えて鬼を弱らせる、トドメは継子であるカナヲに任せようと思っています。
頸を切れる剣士が羨ましい、同じ年齢で少ししか身長が変わらないさん。
煉獄さんの継子になって初めて会った時は驚きました。こんな子が鬼の頸を切れるのか?と思うくらいに。
今だから言えますけど少しだけ妬みました、そんなに怯えるのなら頸を落とすだけの力を私にくださいと。
でも日に日に強くなる貴女を見てそんな思いも消えました。
羨ましいと思うのは少しだけあるんですけどね。
し「私たち、二十を迎えられないですね。」
全てを話し終えてさんを見れば何とも言えない表情をしていた。
『カナヲちゃんはこの話知っているの…?』
視線を自分の手元に落としながら零した言葉は小さかった。
カナヲにはまだ話していない、柱稽古が始まる時まで言わないでおこうと思っている。
し「いいえ、まだです。さんにだけですね。」
『どうして私に?』
貴女が唯一心を開ける友人だったから、ですかね。
言葉に出して伝えるのは恥ずかしいので言えませんけど。
ニッコリ笑って誤魔化しておきましょう。
『仇を打つことを目標にした私達にとっては死するも本望。しのぶちゃんが決めた事なら見守るよ、もしかしたら私の方が先に命を落とすかもしれないけれど。』
し「私もさんの行く末を見守りますよ。」
さん、もし鬼のいない世界でまた出会うことが出来たなら、私達また仲良くしましょうね。