• テキストサイズ

夢幻

第8章 捌







し「お二人と同じ条件がトリガーとなるようですね…。先日柱合会議があったんです、その時に時透くんや甘露寺さんの痣の話がありました。ただ…」





『ただ?』





彼女がぎゅっと握った拳はきっと色んな思いが込められているのだろう。
はそっとしのぶの手に己の手を重ね、その先の言葉を促す。





『師範が亡くなってからは何を聞いても驚かないよ。だから話して?』





僅かに眉を下げ不安げな表情を見せるしのぶは今だけ年相応に見えた。
出会ってから初めて見せる表情に驚いたが彼女なりにこれまで気を張っていたのだろう、お姉さんの言葉を胸にずっと鬼と向き合ってきたのだから。





し「っ…先日柱合会議でそのお話になった時に分かったことが幾つかありました。メリットとしては力が向上すること、ただデメリットとしては…」





一呼吸置いてしのぶが発した言葉に二人の間には少しだけ無言の時が流れた。





____痣が発現した方はどなたも例外なく二十五の歳を迎える前に死んでしまうんだそうです。






ショックだとか死を恐れての無言ではなかった。
鬼殺隊士になってすぐの頃は死を恐れた、足が竦んで仲間を見殺しにしてしまうくらいに。
そんな中で杏寿郎に出会い強さを身につけた。





でも今のは違う、杏寿郎を失ってから死への思いよりも憎しみや怒りで死への恐怖はもうなかった。
この身が尽きようとも必ず己の手で仇を打つのみ。
その思いしかなかったのだ。





『あと七年の命を差し出してでも私は上弦ノ参の頸を取りたい。その為なら死ぬのなんて怖くないよ。』





し「…さんが羨ましいです。」





『どうして?』





俯いたままぽつりと言葉を零したしのぶちゃんは昔の話を始めた。
辛い、過去のことを…。





/ 69ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp