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夢幻

第8章 捌







普段は笑みを纏っている彼女からは想像もつかない表情に少しだけ戸惑った。
何か不味いことを言ってしまっただろうかと不安が過ぎる。





『しのぶちゃん?』





彼女の綺麗な瞳が揺れて床の方へと視線が動く。
言うべきか言うまいか迷ったような口元はきゅっと結ばれている。
何か、あったんだろうか。





し「さんが眠っている間に色々な事がおきました。時透くんと甘露寺さんをご存知ですか?」





時透くんと甘露寺さん…甘露寺さんは知っている。
杏寿郎さんの元継子だったと千寿郎くんから聞いていたから、時透くんももちろん知ってはいる。
最年少で柱までのぼりつめた子だと、会ったことはないが柱の人達の名だけは聞いていた。





『名前だけは知っているかな。その二人がどうかしたの?』





し「さんが眠っている間に時透くんと甘露寺さんは上弦ノ鬼との戦闘中に痣が出たんです。」





上弦ノ鬼との戦闘中に痣?
痣ってなんの事だろう、聞いた事もないけれどそれと二人と何が関係あるの。





し「さんを見つけた隠の者が言っていました。さん、貴女も痣が出ていたそうなんです。」





『私にも?』





し「隠の者の言う話では首から頬にかけて炎のような痣が出ていたと言っていました。中級鬼との戦闘だったと聞いていますが、どのような状況だったか覚えていますか?」





首から頬にかけて炎のような痣が出ていた。
我を忘れて我武者羅に戦闘していたが薄らぼんやりと思い出したのは鬼の発言だった。
確かにあの鬼は怯えたような眼差しで私の首元を指差し、なんだその痣はと言っていた。





杏寿郎さんへの発言が怒りのトリガーを引いた感覚だった。
煮え滾るような怒りと体温が急激にあがる感覚、心拍もおそらく上がっていただろう、ドクリと騒ぐ脈も微かに覚えている。
その刹那に気づいたら鬼の頸は落ちていて戦闘は終わっていた。





そこまで話すとしのぶちゃんは顎に手をやり考える素振りをした。





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