第8章 捌
光に誘われるようにその道に進む。
暖かい光に包まれれば暗闇の世界での意識を手放す。
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重い瞼を開ければ見慣れない天井が視界に広がる。
薬品の匂い、カチャカチャと金属のぶつかる音、慌ただしく遠くで聞こえる足音。
ここは____
?「あ!お気づきになられましたか?しのぶ様!しのぶ様!さんが目をお覚ましになられました!」
小柄な女の子が私を見るなり聞き覚えのある名を叫びながらパタパタと走り去って行った。
今の子達はしのぶちゃんの所の…?って事はここは蝶屋敷…。
そうだ、任務の後意識を失ったんだっけ。
ムクリと身体を起こせば筋肉痛のような痛みが全身を襲った。
炎の呼吸にはない型を使った反動なのか身体が軋むように悲鳴をあげている。
『これは、中々きついなぁ…』
いてて、と軽く踞れば扉の開く音がした。
横目で軽く見やれば蝶のように華麗で綺麗な羽織を身に纏うしのぶちゃんの姿が見えた。
し「さん、お目覚めですか?二日程眠っていましたが体調はどうですか?」
同じ歳だというのに私とは真逆の大人びた顔つき、落ち着いた雰囲気を纏った彼女が近くの椅子に腰を下ろした。
脈を図り喉の腫れなども念の為と調べ大丈夫そうですねと呟いたあと神妙な面持ちになった。
し「さん煉獄さんの事ですが…」
しのぶちゃんも村田さんと同じで言葉を選んでくれているようだ、気を遣わせないように微笑みながら大丈夫と私は言った。
『ありがとうしのぶちゃん。師範は柱としての務めを果たしたと思うから。後は私が引き継いで…仇を打つだけ…。』
しのぶちゃんと話していて私は上手く笑えているのだろうか、自分にそう言い聞かせながらも日に日に募るのは上弦ノ参に対する激しい怒りと憎悪。
ドクリとあの時のように脈打った感覚を落着けるために深呼吸をする。
しのぶちゃんの方を見やれば真剣な眼差しで私を見つめていた。