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夢幻

第8章 捌







真っ暗闇ということもありその光に目が眩んだ。
ゆっくりと目を開ければ、そこには____





『し…はん…?』





悲しそうに微笑む愛しいあの人がいた。





はふらつく足元で杏寿郎の元へ走る。
夢でもいい幻でもいい、逢いたかった、もう一度触れたかった。
陽だまりのような温もりに包まれたかった。





あと少し、手を伸ばせば届く距離なのに。





『なんでっ…いかないで…一人はもうイヤ…お願い、置いていかないで…』





止めどなく涙が溢れて頬を伝う。
逢いたくて仕方がなかったのに、どうして触れられないの。
その場に蹲り嗚咽を漏らしながら泣きじゃくる。





杏「、すまない。君にそんな想いをさせてしまって。」





杏寿郎の凛とした声がの耳に届く、顔を上げれば申し訳なさそうな顔をした杏寿郎が近くにいた。
杏寿郎に触れようと伸ばした手は空を切った。
その現実がこの世のものでは無いと突き付ける。





杏「君にそんな顔をさせたくはない。これ以上辛い思いもして欲しくはない。だが、君は一鬼殺隊士だ。俺の自慢の継子だ。」





悲しそうな目をしていた彼の目は真剣なものに変わっていた。
何も言えずに止まらない涙と嗚咽で視界が歪む。
分かってる、でも、でも_____





杏「は強い、俺が認めた君ならやり遂げる事が出来る!先程の戦いも見事だった!強くなった、だからこそまた立ち上がって欲しい。君の力で救える命が沢山ある。酷なことではあるが、辛くとも苦しくとも立ち上がって前に進んで欲しい。」





『ひっく…っ…ぅ…でも…また、大切なっ…人達がいなく、なったら…?っ…どうすればっ…』





守った命もあった、でも失った命もあった。
笑っていた人達の笑顔にヒビが入り割れて消えてしまう。
貴方だってその中の一人だというのに。





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