第8章 捌
鬼「ひっ!!!お前っ…その首の…痣っ…」
痣…?何を言ってるんだこの鬼は。
嗚呼、煩わしい、うるさい。忘れていた感情を思い出す。
そうだ、元はと言えば鬼が存在していなければ杏寿郎さんは死ぬことなかったんだ。
千寿郎くんも笑っていられた、竈門くんが己を責めることも無かった、私自身絶望に浸ることもなかった。
『そうだよ…元はと言えば…』
日輪刀を一度鞘に戻し、低く体勢を変える。
例えていうなら我妻善逸の壱ノ型の構え、彼の構えよりは体勢は高いが見た目は似ている。
唯ならぬ雰囲気に鬼が慌てふためく、ポツリとが口を開いた瞬間…。
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何が起きたか分からなかった現に俺の頸は今、宙を舞っている。
いつだ、いつ切られたんだ、何も見えなかった。
あの小娘が異様な雰囲気を身に纏い初めてから空気が変わり足が竦んだ。
構えを変えたと思ったら、これだ。
アイツは…ヤバいかもしれない…
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『はっ……はぁっ…っ…』
急に身体を襲う強い倦怠感と目眩にその場に蹲る。
息が上手く吸えない、酷い疲労感、己でも何が起きたのかよく分からなかった。
震える手で身体を支えて顔を上げてみれば鬼がいたはずの場所に鬼が着ていた服しか残っていなかった。
討伐は出来たようだ、気怠い身体を木に凭らせ呼吸を整える。
なんだったのだろう、急激な心拍上昇と体温の上昇。
杏寿郎への罵倒を聞いた瞬間フツフツと湧き上がっていた怒りの糸がプツリと切れたような気がした。
その後に繰り出した技は炎の呼吸にはないもの。
段々と冷静さを取り戻し少しずつ先程の光景を思い出していく。
身体が勝手に動いていた、その方が答え的にはしっくりくる。
後は鬼が最後に言った痣ってなんのことだろうか。
隠「さま!」
事後処理の為に駆け付けた隠の声を最後に緊張が解けたのか意識を手放した。