第8章 捌
師範よりも私は強くないし剣術なんて以ての外。
仇を打つまでは意地でも死なないつもりではいるけれど、上弦ノ参となると話は変わってくる。死ぬことは免れないだろう。
『今は考えてもダメだ、任務に集中しよう。』
下級鬼の気配は殆どない、残るはこの任務の親玉であろう中級鬼の討伐。
生い茂る木々に飛び移りながら鬼の気配を辿る。
ザザッ
『!!』
次の木に移ろうとした時鬼のものであろう攻撃が飛んできた。
刀を抜き、身を捩って間一髪の所でそれを交わす。
鬼の姿は捉えれていないが向こうはこちらの姿に気づいているらしい。
『ふぅ…厄介だな。』
立ち止まり周りを見回す。
こういう時こそ焦ってはいけないと教わった、呼吸を整えて気配に集中する。静かな森に僅かな気配を捉えた。
『見つけた、全集中 炎の呼吸 伍ノ型 炎虎!』
身体中に酸素を取り込み目一杯に対象物目掛けて技を繰り出す。
虎を模した炎が鬼の存在目掛けて飛んでいきその姿を捉えた。
鬼「ぎゃっ」
『壱ノ型 不知火』
鬼の懐に滑り込むように踏み出して技を繰り出した、はずだった。
素早さでは鬼の方が幾つか上手だったようだ、ギリギリの所で技を交わされてしまった。
鬼「ぎゃはは!!お前、炎の奴の弟子かぁ?そんなヒョロい技で俺を倒せるのかよ!炎の奴も所詮は人間だからな!死んで当然だ!!」
耳障りな笑い声を上げながら木に降り立つ鬼を見つめ、フツフツと腹の底から湧き上がる怒りに耐える。
感情的になると隙を付かれてしまう、落ち着け挑発に乗ってはならない。
ドクリ、ドクリと心臓が脈打つ、視界が揺らぐ。
下卑た笑い声や杏寿郎を罵る声にに怒りに身を呑まれてしまいそうになる。
フツフツと体温が上がる感覚、これは怒りか熱か。
『ふっ…ふ…』
息が上がる、強く握り締めた日輪刀が小刻みに震える。
体温だ、おかしいくらいに体温が上昇している。
ドクドクと心拍数が上がっていく、なんなんだこの感覚は。