第7章 漆
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バサッ…
の肩に一羽の鎹鴉が止まる。
炭治郎には聞こえないようにボソボソと耳元で話す鴉の内容に驚き、思わず目を見開いた。
愼寿郎ガ杏寿郎ノ遺言ヲ聞キ彼ノ為二涙ヲ流シタ。
驚いた、継子になってからというもの愼寿郎との関わりはほぼなかったが、杏寿郎や千寿郎の話を聞く限りそう言った言葉など響かない人だと思っていた。
実際炭治郎への態度を見ていてもそうだった、悲しいものだと思った。
『良かった…悲しんでいてくれたんだね…』
失ってから気づくのは遅いというが、失ってからも気づかずにいることの方が酷なこと。
彼もまた親だった、杏寿郎の生前はいい父ではなかったがちゃんと父としての気持ちは持っていたんだ。
ありがとうと伝え鴉の頭を撫でればクルルと喉を鳴らしながら気持ち良さそうに目を細めていた。
炭「さん、わざわざすみません…」
ポツリと俯き加減に零す炭治郎にはきょとんとした面持ちで見つめる。
無理をしてまで煉獄邸に来てくれた後輩を一人で帰す訳には行かないと思った、人としては当然のことをしただけ。
『私は、謝罪よりはありがとうの方が嬉しいかな。寧ろ無理をしてまで来てくれてありがとう。君のおかげで煉獄家にも変化が起きた。君が来なければ千寿郎くんも愼寿郎さまも悲しみや誤解に包まれたままだったかもしれない。君の行動のおかげで少なからず救われた人がいることを忘れないで。私も含めてね。』
眉を下げたまま見上げる炭治郎に笑って答えた。