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夢幻

第7章 漆







『泣いてちゃいられないね、竈門くんを送った後に私も暫く任務で留守にするけれどよろしくね千寿郎くん。』





千「はい、お気をつけて。」





千寿郎から受け取った杏寿郎の羽織に袖を通し、行ってきますと炭治郎の元に戻るの背中に緩く手を振りながら千寿郎は聞こえないくらいの声で見送りの言葉を零す。





千「行ってらっしゃい、義姉上。」






生きていたらきっと夫婦になっていただろう。
そうなればが義姉になる、千寿郎にとっては喜ばしい事だった。
二人の背中が遠くなるまで見送った後に家の中に入る。
愼寿郎にも杏寿郎の遺言を伝えねばならない。





父である愼寿郎の部屋の前で歩みを止める。
いつもここの前では緊張してしまう、深呼吸をして襖に手をかけ中にいることを確かめた。





千「失礼します、お戻りでしたか…あの…先程の「うるさい!!どうでもいい出て行け!!!」」





言い終える前に愼寿郎の怒号が言葉を遮った。
いつもの事ながら体がビクリと跳ねる、父の言葉には体が跳ね上がってしまうのだ。
それでも兄の最後の言葉は伝えたい、炭治郎が無理をしてでも伝えに来てくれたのだから。





千「で、でも兄上の…」





愼「くだらん!!どうせ俺への恨み言だろうわかりきってる!!さっさと出て行け!!!」





愼寿郎は全く聞く耳持たず。
わかりました、ただそう言うしかなかった。
襖を閉める前にもう一度父の背中を見る、一度もこちらを振り返ることの無い背中に向けて意を決して口を開く。





千「体を大切にして欲しい。兄上が父上へ遺した言葉はそれだけです。」





炭治郎から受け取った兄の遺言を伝えた後に静かに襖を閉めた。





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