第7章 漆
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千「あの時の簪だったんですね」
『え…?』
ポツリと独り言のように呟いた千寿郎の言葉に羽織から顔を上げる。
チリンと玉飾りが揺れ、千寿郎が眉を下げながら微笑んでいた。
千「兄上からの贈り物ですね、とても大切そうに持っていたので私も覚えています。折れずに受け取ることが出来て良かった。一目惚れをしたそうです、その簪さんに似合うと思ったと兄が仰ってました。」
揺れる玉飾りをそっと撫でる。
簪を送る意味は竈門くんから聞いていたが、杏寿郎さんはそれを知っていたのかな…。
千「兄上には私が意味をお話しました。守りたいと思ったのも一生を添い遂げたいと思ったのもさんが初めてだ。理にかなった贈り物だと」
どこか嬉しそうに話す千寿郎をただ見つめる。
炭治郎からも聞いてはいたが杏寿郎の弟である千寿郎にも自分の想いを話していたのかと思うと、なんだか気恥ずかしくなってきた。
守りたいと思ったのも一生を添い遂げたいと思ったのも私が初めて…。
『っ…師範もさ、直接言って欲しいよねっそういうことはさ!』
照れくさそうに笑いながら誤魔化すの頬はほんのり赤く染まり、涙が伝っていた。
千「想いが通じ合いましたね…良かったですねさん」
自分の事のように嬉しそうに笑う千寿郎にもまた笑ってみせた。