第7章 漆
千寿郎の気持ちを無下にすることも出来ず、鍔を受け取り礼を述べた。
千「持っていて欲しいんです。きっとあなたを守ってくれます。それと、さんにはこれを。」
その光景を眺めていたは急に自分が呼ばれたことに驚き、千寿郎の顔を見やる。
自分が受け取るものなど何かあったかと思いながら千寿郎の行動を見ていたら、彼は見覚えのある羽織をの前に差し出した。
千「兄の羽織です。破けている所や裂けている所は私が直しました。元通り、とまではいかなかったですがさんの事も守ってくれます。受け取ってください。」
差し出されたのは生前杏寿郎が羽織っていたもの。
ボロボロになっていたはずの羽織は汚れから破けた所まで綺麗に直されており、杏寿郎が着ていた時と変わらない姿で差し出されたのだ。
これには流石にも炭治郎と同じ反応を示した。
『千寿郎くん、流石にこれは私も受け取れないよ。師範の羽織まで渡してしまったら煉獄家に何も残らなくなってしまう。』
千「いいんです。鍔を炭治郎さんに持っていてほしいように、この羽織もまたさんに持っていてほしいんです。」
煉獄家には兄が過した思い出が残りますから、そう言いながら笑う千寿郎の目をしばらく見たあとにそっと綺麗に修復された羽織を受け取る。
『ありがとう…千寿郎くん…。』
受け取った羽織をギュッと抱きしめ少しの間だけ顔を埋める。
懐かしい杏寿郎の香りが鼻をついて目頭にまた熱を持ち出した。