第1章 壱
ザザッ…
鎹鴉の後を追い、木々の上を飛び移りながら森を駆けていく。
先程とは違い今は冷静だ、何も感じない。
きっと亡くなった師範をまだ目の当たりにしていないから現実味を帯びていないのだろう。
あの時、任務について行くと言っていれば何か変わっていたのかな。
師範は死なずに済んだかもしれない、怪我だけで済んだかもしれない。
鴉「コノサキ、モウスグダ!」
やだな。本当は何かの間違いで、驚かせようとしてるだけだって言ってくれないかな。ねぇ、師範…。
森から抜ければそこには脱線した列車が見えた。
隠しの人達が事後処理を進めている。
怪我人が多かったのかいつもより隠しの人達が多い。
ふと視線を移せば見知った顔がいた。
『竈門くん…』
見覚えのある羽織の前で泣いている少年。
その傍には猪の被り物をした少年もいる。
黄色い髪の少年は鬼の少女が入った箱を背に立っていた。
その近くに降り立てば3人の少年は顔を上げた。