第1章 壱
『炎の呼吸伍ノ型…炎虎』
師範から教わった型を出す、前方広範囲にわたる斬撃により下級鬼の首を切り落とす。
足りない、足りない、こんなものじゃ足りない。
この鬼共が朽ちても師範は帰ってこない、亡くなった命は決して戻らない。
鬼「この技はっ…!!ぐわぁっ!!」
ザクッ、ザクッザクッザクッ
首を落とされてもすぐに消えない体。
落ちた頭に何度も何度も刀を突き刺す、消えろ、消えてしまえ。
隠「様!ここは私共に任せて、炎柱様の元へ!!!」
隠しの者に肩を掴まれて現実に引き戻される。
足元に視線を戻せば鬼の姿はもうとっくに消えていた。
地面に刺さったままの切っ先を引き抜き、隠しの者に頭を下げてその場から立ち去る。
鎹鴉が師範の元まで案内するように先を飛ぶ。
何故だろう、変に落ち着いている。
先程までは頭が真っ白になっていたのに。
命尽きた師範をまだ目の当たりにしていないからだろう。