第5章 伍
それからどのくらい経ったか杏寿郎が一人の小娘を連れてきたんだ。
全ての物に絶望したかのような瞳をした娘を見て、厳しい鍛錬には耐えられないと思っていた。
だが数日たってもこの家から出ていくことは無かった。
それからだったな、杏寿郎の笑顔が増えたのは。
娘の瞳にも徐々に光が宿り笑みが増えた。
お互いがお互いをいい方向に持っていく、短い時の中でも深い絆が見えた気がしたんだ。
主人の笑顔を見ることが出来て嬉しかったさ。
お前のおかげだ、杏寿郎も最後はきっと幸せだった、ありがとう。
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師範の鎹鴉の言葉にポロポロと涙が溢れる。
嗚呼、もう泣かないと決めていたのにどうしてこうも溢れて止まらないのか。
良く見ていたものだ、師範が今までどのような想いをしていたのかは短い間しか共にできなかった私にはわからないから。
だからこそ長くいた者(鎹鴉)の言葉がよく響く。
己が無力だとばかり思っていた故に、誰かに感謝をされたことがあまりなかったから、余計にだ。