第5章 伍
『短い時の中で私も師範の継子になれて幸せだった、この人が私を見つけてくれなかったら私は鬼殺隊を辞めていたと思うから』
静かに涙を流しながら口を開く。
それでも心做しかの表情は先程までの悲しみで苦痛に歪む表情ではなかった。
穏やかに口元には笑みを浮かばせながら泣いている。
あの人の継子になって人の温かさを知り
あの人の継子になって強さを身につけ
人を大事にすることを覚えた
『師範、ありがとうございました。どうか、安らかに…』
別れの言葉を紡いだ後に杏寿郎の唇に軽く自分の唇にをあてる。
今思うと私の一目惚れだった、凛々しさの中に強さがある、だけどどこか儚さも混じっていて。それでも真っ直ぐに折れない心を持つ人だった。
稽古を乗り切れば己の事のように喜んでくれた、笑顔になってあの大きくて温かい手で頭を撫でてくれた。
もう触れて貰えないけれど、前を向くから。
だから____
『もし来世が存在するならば、どんな形でもいい、その時はまた杏寿郎さんの傍にいさせてくださいね。』
また、あなたに会いたい。