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夢幻

第4章 肆







優しく小さな子を宥めるように千寿郎の背中を摩ってやれば、泣きじゃくりをあげて震えていた肩にも落ち着きが見えてきた。
そんなタイミングで煉獄邸の扉を叩く音が響く、恐らく隠しの者が杏寿郎を連れて帰ってきてくれたのだろう。
千寿郎をその場に落ち着かせては戸の前まで歩いて返事をする。






『はい、どちら様でしょう。』





静かな声で問えば扉の向こうの者も静かな声で答える。





隠「さまですか?炎柱さまをお連れ致しました。戸を開けていただいてもよろしいでしょうか。」





怪しいものでは無いと判断し静かに戸を開けると、隠しの者が数人立っていた。その背には眠ったままの杏寿郎の姿が見えた。






千「あ…に、うえ…」





千寿郎が後ろからよろめきながら立ち上がる。
一歩、また一歩と少しずつ歩を進め杏寿郎を背負った隠しの前まで行くと血が滲みそうな程きつく唇を噛み締めた後に、悲しそうに微笑んだ。





千「兄上っ…お…おかえり…っ…なさいっ…」





が宥め止んでいた涙が千寿郎の頬を伝い再度濡らしていく。
それでも笑って見せようと必死に笑おうとする千寿郎の姿に気づけば隠しの者まで涙していた。





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