第15章 帰省後のひと騒動【山姥切長義、前田藤四郎他】
「……まったく、何をしているんだ、君は」
式神の残骸の検分から戻ってきた長義は、机に沈んでいる彩鴇を見て、小さくため息をつく。
「まだ侵入者が残っていないか、本丸に異常がないか、何か盗まれていないか、政府への報告、やることは山ほどあるんだぞ」
「僕にできることがあれば言ってください。手伝います」
前田も手を挙げる。
「助かる。じゃあ、こんのすけと本丸内の検分を頼むよ」
前田に調べてほしい事柄を簡単に説明し、こんのすけは食堂にいた面々に話を聞いているはずだと伝える。
長義が先に戻ってきたのは、報告内容をまとめるためだ。
審神者の不在を狙った侵入、こんのすけを封じられ、異常事態と気づくのが遅れた。
さらには彩鴇がすぐに帰ってこられないよう、門に細工をしていたことも報告する必要があるだろう。
「ほら、いつまでも凹んでないで、君も所感をまとめないか」
こういう時の長義は厳しい。
まったくの正論なので、言い返すこともできない。
「……中身はともかく、外見の擬態精度は高精度だったよね。他者から見た場合、本人だと認識するように何らかの術式をかけていたと思われるわ」
本人と見比べた時には判別できたことから、敵は彩鴇に本丸に戻ってほしくなかったのだろう。
「ここの結界は、内部の人間を審神者かどうか判定して、審神者以外は認証を持っていないと弾き出される仕組みよ。私が戻るまでの間弾き出されなかったことを考えると、そこにも何か仕掛けがありそうよね」
結界の防御機構をも欺く手段も講じていたと考えられる。
しかし、彩鴇という本来の審神者が本丸に戻ってくると、本来の防御機構が働いてしまうため、門に細工して戻れないようにした。
「防御機構の穴を突かれたということか。厄介だな」