第15章 帰省後のひと騒動【山姥切長義、前田藤四郎他】
「……よし、封印解除術式はこんなもんかな。この札を筒に当てて、霊力を通すと解除できるはずよ」
「お任せください」
術式を込めた札を受け取った前田を部屋に残して、次は結界を張る。
長義は彩鴇と部屋の外に待機だ。
もし筒から妖怪が出た場合、簡単に結界を破られてしまうと元も子もないので、結界の内側に物理特性も加えて補強する。
「結界を反射特化型にしたから、壁に触ると弾かれるわ、気をつけてね」
「承知しました。……では、参ります」
前田が封印解除術式を使うと、すぽんと煙を上げて筒から何かが飛び出してきた。
「……いけません、あぶらあげ、もうたべられません〜」
出てきたのは立派な鼻提灯を膨らませているこんのすけだった。
夢でも見ているのか、寝言を言いながら幸せそうに笑っている。
「……こんのすけですね」
「こんのすけだな」
「どうやってこんな小さな筒に入ってたのか、すごく不思議ね」
一応何かが化けている可能性も考え、こんのすけに簡易解析をかける。
「個体ID一致、解析完了っと。間違いなくこの本丸のこんのすけだわ」
結界を解いた彩鴇がこんのすけの頬をつつく。
パチンと鼻提灯が弾け、こんのすけが目を覚ました。
「ハッ!ワタシは一体……?主さま!一体どこであのような術を覚えたのですか?ましてそれをワタシに使うなど!!」
「え?なんなの、何のこと?」
起き抜けにもかかわらず、すごい剣幕で詰め寄られ、彩鴇は戸惑う。
まったく身に覚えがないので尚更だ。