第15章 帰省後のひと騒動【山姥切長義、前田藤四郎他】
執務室に向かっていると食堂の方から前田が走ってきた。
「あっ、主君!ご無事で何よりです」
前田から彩鴇の偽者が侵入したこと、式神で何やら調べていたことについて簡単に報告を受ける。
「陸奥守さんをはじめ、偽者だと見抜けず……今であれば分かるのですが……」
「私には何の被害もなかったわけだし、そんなに気にしなくていいわ」
彩鴇は申し訳なさそうにする前田の肩に手を置く。
何名もの男士が偽者を見抜けなかったことから推察するに、何らかの術で認識阻害された可能性が高い。
ただ、長義は一瞬で判別したし、前田も今なら見抜けると言っている。
ここから何かの糸口が掴めるだろう。
「ねぇ、確認なんだけど、前田くんはなんで私が本物だって分かるの?」
「ええっと……」
どこかどんよりとした表情の彩鴇に前田は目を泳がせる。
果たしてこれを言って良いのだろうか?
彩鴇は気分を害さないだろうか?
前田が逡巡していると、長義が口を挟む。
「それは、俺と同じく主の霊力の質を見てだろう」
「その、主君の霊力は、淡いといいますか……いえ、決して不足しているという意味ではなくて……」
「これほど弱々しいのは見間違うはずないからな」
前田の必死の言葉選びも虚しく、長義がズバリと言ってしまう。
「やっぱり私の方が劣ってたんじゃない!ちょっと待って、私、式神に負けたってこと!?」
現実は非情である。