第15章 帰省後のひと騒動【山姥切長義、前田藤四郎他】
「ご無事ですか?」
「大丈夫じゃ。それより本物の主が心配ぜよ」
偽者が本丸に侵入したということは、本物の方はどこかに捕われている可能性も考えられる。
「え、ちょっと何、なんなの!?」
長義が剥がした札からしゅるりと人影が這い出てきたのだ。
這い出した人影の方も驚いたようにこちらを見上げる。
まるで鏡でも見ているかのように、それは彩鴇と同じ顔をしていた。
「まさかドッペルゲンガー!?」
彩鴇が驚きの声を上げるのとほぼ同時に一閃が走る。
長義が一瞬の隙を逃さず切り伏せたのだ。
切り口から崩れ出したそれは、紙の人形になる。
「……これ、式神?」
はらりと落ちた紙の人形に手を伸ばすと、長義に制止された。
「触らない方がいい。撤去するのはこんのすけに解析させて、安全を確認してからだよ」
わかったとうなずき、こんのすけを探しに行く。
今の時間帯なら執務室にいるはずだ。
「というか、さっき迷いなく私のそっくり式神を切ったわよね。もし本物の私だったら大惨事じゃない」
問答無用で切られるなんて、想像したくもない。
彩鴇が背筋を寒くしている一方で、長義は涼しい顔をして答えた。
「あれは何者かが妨害工作に使っていた札から出てきたし、感じられた霊力の質も全然違ったからね。間違えるはずがない」
長義の分析に、ひとつの疑問が浮かぶ。
「それって私の方が霊力の質が悪かったってこと?」
「……さあ、どうだろう?」
「その間は何なの?!」
長義は意味深に肩を竦めた。