第15章 帰省後のひと騒動【山姥切長義、前田藤四郎他】
長義は彩鴇からの通信を受けて、本丸と外界を繋ぐ門の前に来ていた。
どうも通信エラーで現世と接続できなくなったらしい。
しかも政府の簡易スキャンでは、こちら側に問題があるというのだ。
別に変な工事をしたわけでもあるまいに。
「どこか損傷していたりする?」
通信札から聞こえる彩鴇の声は、どこか心配そうだ。
しかし、ざっと見た限り、目で見て分かる損傷はない。
一応門に取り付けられた転送装置を起動し、損傷やバグをスキャンさせてみるが、何も引っかからなかった。
このことから、門自体は正常だということが分かる。
「目で分かる損傷はないし、門をスキャンしても損傷・バグはないみたいだ」
「じゃあ、なんだろう……?」
本丸の門に問題がないということは、本丸とターミナルの門を繋ぐ経路に異常があるのだろうか。
それだったら、政府の簡易スキャンで本丸側の異常とは判定されないはずだ。
他に考えられるとすれば、外付けで受信遮断装置が取り付けられた場合か。
「……長義、門に変な術式が書き込まれたり、札が貼ってあったりしない?」
どうやら彩鴇も同じ考えらしい。
そのような悪質な悪戯をする輩がいるのであれば、始末書ものだ。
長義は内心でそう毒づきながらも、門柱、門扉、梁部分と目を凝らす。
さらに目視できない梁の裏に手を伸ばし、滑らせると明らかに触感が異なる部分がある。
指先に力を入れると、それはぐしゃりと剥がれた。
「あったよ。……まったく誰がこんな目立たない所に札を貼り付けたんだか」
剥がした札には、術式が描かれている。
門の接続不良の原因は、この札でほぼ間違いないだろう。
「これで通れるようになったんじゃないかな」
「それじゃあ、もう一度転送装置を動かしてみるから、一旦通信を切るわね」
長義に礼を言って、通信を切った彩鴇は、再度ターミナルの窓口へ向かった。