第15章 帰省後のひと騒動【山姥切長義、前田藤四郎他】
昼食を済ませ、しばらく経った時間帯に食堂に顔を出した太郎太刀はあまり見ない光景に少し目を見張る。
「おや、皆さんお揃いで」
それもそのはず、陸奥守をはじめ、秋田、博多、前田、浦島、鶴丸、豊前、桑名と刀派も刀種もバラバラな面子が夕食時にはまだ早すぎるのに集まっているのだ。
「主君が現世から帰ってきたんです。陸奥守さん達とお土産話を聞こうと思って、みんなで集まってるんですよ!」
秋田の待ちきれないといった様子に太郎も納得した。
そう言われてみれば、彩鴇の土産話が好きそうな面々だ。
「……にしても、遅いのぉ。待ちくたびれたぜよ!」
陸奥守が口を尖らせている。
食堂に集まってからもう小一時間、こんのすけに用があると言っていたが、そんなに長くかかる用事なのだろうか。
「ちょうど部屋に戻るところでしたし、私が呼んできましょう」
「僕も一緒に行きます!」
前田も席を立って、太郎と2人で彩鴇の執務室へ向かう。
執務室へ向かう途中、またも見慣れぬものが目に留まる。
廊下で小さな白いものがくるくると動いているのだ。
「これは……紙の人形ですか?」
前田が近づいてよく見てみると、人型に切り取られた手の平サイズの紙が忙しなく動いている。
太郎も屈んで白い物体を確認した。
「式神の類いですね。一体誰が……?」
この本丸に式神を使う者はいないはずだ。
執務室へ向かう道すがら、目に入った式神は5体。
辺りを動き回っているだけで、害はなさそうだか、普段は目にしない光景だ。
執務室に到着すると、ちょうど彩鴇が出てきたところだった。
「主君!この式神は何なのですか?」
前田の指す先を見て、得心した様子で彩鴇はこう説明した。
「ちょっと結界のメンテナンスでね。すぐ終わるから気にしないで」
彩鴇は陸奥守を待たせてるよね、と小走りに去っていった。
残された太郎と前田はポツリと呟く。
「……主は式神を使えないはずですが」
「はい、以前にそう嘆いていたのを聞いたことがあります」
それに反するように、今も複数の式神が動き回っている。
思わず顔を見合わせる2人。
ではあれは一体誰だ?