第14章 帰省前の一悶着【山姥切長義、前田藤四郎】
「なにも伊達や粋狂で言っているわけじゃないのよ?」
こんのすけも呼んで、説明会が始まった。
彩鴇に指示され、こんのすけが資料を展開する。
「これは、これまで現世で時間遡行軍に襲われた審神者の情報よ。ちょっと読んでみて」
2207年6月9日
所属地 武蔵国
女性
政府霊力研究機関へ移動中に時間遡行軍に遭遇
短刀2口 脇差1口
護衛:加州清光が応戦・軽傷
審神者本人は無傷
2207年8月21日
所属地 相模国
男性
実家に帰省中に時間遡行軍に遭遇
打刀2口 槍2口
護衛:太郎太刀が応戦・無傷
審神者本人は無傷
2208年1月2日
所属地 山城国
女性
本丸へ帰還のため、ターミナルへ移動中に時間遡行軍に遭遇
脇差3口 太刀1口
護衛:平野藤四郎が応戦・中傷
審神者本人は右腕を切りつけられ、軽傷
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名前は伏せられているが、所属地やいつ被害に遭ったか、被害状況などが記載されている。
ここ数年で決して少なくない数の審神者が現世で時間遡行軍に襲われていることが分かる。
時期や場所、襲ってくる敵の編成もバラバラだ。
被害状況も様々で、審神者も護衛の刀剣男士も無傷という事例から、酷い事例では護衛の刀剣破壊まである。
前田がふと気づいたことを聞いてみる。
「女性が多いのではないでしょうか?」
全体をざっと見たところ、7割ほどが女性審神者という印象を受ける。
「それはこの業界の男女比が女性に偏っているからだ。統計もとっているが、男女間で明確な差は出なかった」
前田の質問にすかさず答えたのは長義だ。
さすがは政府にいただけのことはある。
彩鴇は長義の言葉にうなずくと、さらに説明を続ける。
「ここで注目してほしいのは、敵がどうやって審神者を見つけるのかという所よ」
「……そういうことか」
「どういうことなのですか?」
長義は得心したようだが、前田はまだよく分かっていない。