第14章 帰省前の一悶着【山姥切長義、前田藤四郎】
「他の者は毎年のことだからと何も言わないのだろうが、襲われてからでは遅いんだぞ」
少し危機意識の低い彩鴇には、安全策をより多く講じておいた方が良いだろう。
彩鴇が反論しようと口を開きかけたところで、執務室の戸が開いた。
「主君、そのような危険があるのなら、私も見過ごせません」
前田藤四郎が険しい顔で戸口に立っていた。
外を歩いていたら偶然2人の会話が耳に入ったのだ。
「長義殿、審神者が現世に帰省されるときは、護衛を連れて行くのが一般的なのですか?」
「少なくとも俺は、現世で護衛を連れていない審神者を見たことがないな」
毎年1人で帰省していたために今まで疑問にも思ってなかったが、政府に所属していた長義が言うのだから、これはおかしいことだったのだろう。
長義と前田、2人に詰め寄られ、彩鴇の旗色は悪くなる一方だ。
「あぁもうっ!分かったわよ!」
さすがの彩鴇も折れたと長義と前田は胸を撫でおろしたのも束の間、次の一言でその安堵は崩れ去る。
「要はあなた達が納得いく説明をすればいいのね!?」
予想外の言葉が飛び出してきた。
全然分かってないではないか……