第13章 セーラー服を着せないで【乱藤四郎、鯰尾藤四郎他】
「だって、主さんと身長同じくらいでしょ?鯰尾兄なら着てくれそうだし」
極短刀の機動力が為せる技なのか、一瞬で着替えを済ませた乱がセーラー服を片手に戻ってくる。
「それに主さんが着ないなら、この子もかわいそう。誰かに着てもらった方が喜ぶよ!」
そう言うや否や乱は部屋を飛び出していった。
もちろん彩鴇が追いつけるはずもない。
「……止める間もなかったわ」
彩鴇は呆然として部屋に取り残されてしまった。
「……セーラー服?いいよ。なんだか面白そうだし」
案の定、鯰尾藤四郎はセーラー服の着用を快諾し、別室で着替え中だ。
乱が嬉々として鯰尾をコーディネートしているらしい。
「主さん!鯰尾兄が着替え終わったよ!」
じゃーんと鯰尾が制服姿を披露する。
「どうですか?花の女子高生デビューできそうですか!?」
長い黒髪をポニーテールに結い、スカートを翻しながらバチーンとウインクする姿は、どこからどう見ても女子高生といって遜色ない。
「……なんかもう女子として負けた気分よね」
元からかわいい顔をしているのは分かっていたが、予想以上の化けっぷりだ。
「主が着たらかわいいと思いますよ?ほら、俺だと骨格とかどうしようもありませんし」
確かによく見ると露出している手や脚は少しゴツい。
しかしそれに気づく者はどれくらいいるだろうか。
最初は絶対顔を見る。
そして鯰尾の顔を見て、女子の格好をしていれば、まず間違いなく男とは思わない。
「悔しいのは、たとえ私が男装しても勝てないのが分かりきってるってことよ」
「え、そこ張り合っちゃいます?」