第12章 SANIWA Blues【大包平、鶯丸他】
「大体、屋根瓦1枚ずつに仕込むなど、途方もないではないか。屋根全体にまとめて1つの術式をかけることはできないのか?」
「屋根の向きで当たる太陽光の強さ、時間が違うでしょ?それに屋根に物がぶつかって1枚でも瓦が割れたら、術式が崩れちゃうのよ」
瓦一枚ずつ術式が独立していれば、どこかが破損しても霊力変換が一気にストップすることはないのだ。
しかし、面倒であることは自明なので、次はこんなことにならないよう、屋根の方角ごとに変換術式を組み込む瓦を決め、他の瓦にはそれを複写する術式を入れる。
そうすれば、もし政府から変更の通達があっても、大本の東西南北4枚の瓦の術式を変えれば対応可能となる。
「とにかくこの枚数の瓦の術式を変えるには、まず人手だろう。俺が集めるから、お前は術式変更をどう進めるか決めておけ」
「できるだけしっかり者をお願いね。最終チェックが大変にならないように」
「……まさか、各々に術式の書き換えをやらせるのか?それこそ確実に粗が出てしまうぞ」
彩鴇は大包平の意図が分からず、首を傾げる。
大包平は何を言っているのか。
だからこその人手だろうに。
「霊力を流すだけで書き換えを行う術式はできないのか?」
「まぁ、できるけど……?」
「それであれば、誰がやっても間違いはないし、後から確認するときも書き換え漏れがないかだけ確認すれば良い。術式がひとつ増えるが、後々かける労力を考えれば、そちらの方が効率的だ」
「あ、確かに!……じゃあ、作業は明後日にするわ。予定が空いてそうな人に声かけてきて」
彩鴇は術式の試作とテスト、修正、頭の中でサッとスケジューリングして伝える。
大包平は案外こういう仕事に向いているかもしれない。