第12章 SANIWA Blues【大包平、鶯丸他】
大包平の背中ですやすやと寝ている彩鴇は、思った以上に軽く、柔らかい。
首にまわされた手も驚くほど小さかった。
それはそれとして、大包平は後ろをついてくる気配に目を向ける。
「おい鶯丸、なぜついてくる?」
「お前が送り狼にならないよう目付けとしてな」
「なっ!?俺は寝込みを襲うなど断じてせん!」
「……なに、ただの冗談だ」
そう言って大包平に背負われている彩鴇の頬をつつく。
寒かろうと着せられた大包平の上着がだいぶ大きいためか、子供のように幼く見える。
「……むぅー、」
「そんなにつつくな。主が起きる」
眠っている彩鴇も顔をしかめて、そっぽを向いてしまった。
「この主は、宴会の席ではいつもこうなのか?」
「ここまで泥酔するのは珍しい。いつもはほぼ飲まないからな」
鶯丸の答えに大包平は少し安堵する。
宴席が設けられる度にこれでは、気が滅入るというものだ。
ほっとしている大包平の顔を見て、鶯丸は少し笑う。
「まぁ、たまには発散させてやろうということでな、皆も大目に見ているんだ」
常日頃から発散しているように見えるが、泣くのは酔ったときだけなのだ。
頻度もそう多くはないので、彩鴇の泣き上戸が始まったときは、甘んじて聞くのが暗黙の了解になっている。
「……お父、さん……」
そのうち彩鴇が親に甘える子供のように小さく身じろぎした。
「おい、俺はお前の父親ではないぞ!」
「あまり大声を出すな、主が起きてしまうぞ」
声を上げた大包平を今度は鶯丸が止めた。
大包平も自分が先に注意した手前、口をつぐむ。