第11章 ○○しないと出られない部屋【千子村正】
ああでもない、こうでもないと脱出方法を再考し始めると、一際高い女性の嬌声と男性の喘ぎ声がした。
目から入る情報はモニターを見なければどうとでもなるのだが、音声はどうしようもなく冷静に考える気力を奪う。
「うるさいわよ!」
モニターに向かって大声を上げると、それに反応したように、すぐに音が聞こえなくなった。
「……スマートスピーカーでも内蔵されてるの?」
あっけなく音声がなくなり、彩鴇は怪訝そうに眉をひそめる。
そういえば、この映像が流れ出したのも、村正が行為について質問したときだったか。
認めたくないが、この部屋はこういった行為をしないと解錠されないと考えるのが妥当だ。
なんとしても回避したいところである。
何か、ないか……?
彩鴇は思考の袋小路に入ってしまったようだ。
村正は唸る彩鴇を見ていることしかできない。
何故この行為について、彩鴇があれほど慌てるのかもよく分からないが、いつもあらゆる可能性を考え、問題を解決していく彼女が、今回だけは一番確実と思しき可能性を真っ向から否定している。
それは彩鴇らしくないと思うのだ。
「やはりここは、この映像の男女のように一肌脱ぐしかないのデハ?」
「……それだわ」
またも赤面するかと思われた彩鴇だが、今度は衝撃を受けたように村正を見つめている。
「では脱ぎまショウ」
「そういうことじゃないわよ?!」