第11章 ○○しないと出られない部屋【千子村正】
「この部屋の解錠条件は、この映像の通り、事に及ぶこと」
まだ艶かしい映像は流れ続けているが、それを無視して思考を続ける。
「つまり、解除機構にこの映像を誤認させれば、開く可能性があるってことよね」
この映像があたかも部屋の中で起こっていることだと認識させれば、課題は達成したことになるのではないだろうか。
「どうやるのデスか?」
皆目見当もつかない村正に、彩鴇はふふんと胸を張る。
「これでも審神者になる前は、霊子工学のエンジニア志望だったのよ。結界術式にプログラミング技術を応用して術式を組み込むくらいどうってことないわ」
試してみる価値はあるだろう。
再度ハッキングを行い、解除を司る術式にモニター映像の認識術式を割り込ませる。
カチリ
直後に鍵が開いたような音がして、彩鴇は思わずガッツポーズする。
「……よしっ」
扉に手をかけると、びくともしなかったことが嘘のように開いた。
部屋を出ると、なんの変哲もない本丸の廊下だった。
しかし、振り返ると部屋の扉は消滅している。
それもそのはず、ここは元々ただの壁なのだ。
彩鴇達は別の空間に飛ばされていたことになる。
誰があの部屋を作り、彩鴇達を転移させたのか。
もちろん彩鴇を含め、あれほど強力な結界を張れる者はこの本丸にはいない。
誰かが侵入した形跡がないか、遠征や出陣先から帰還したときに怪しい術式を持ち帰ってないか、調べなければいけない。
だがその前に村正に言っておくことがある。
「……村正、このことは他言無用よ」
「どのことでショウか?」
村正はわざとらしく肩をすくめる。
「全部よ!絶ッ対に誰にも言わないでよね!」
「分かりました……2人だけの秘密ということにしておきマス」
「ご、誤解を招きかねない言い方はやめてっ!!」
村正が耳元で囁くと、彩鴇は赤面して怒り出すのだった。