第11章 ○○しないと出られない部屋【千子村正】
しかし、すぐにハッキングをかけた彩鴇の表情が曇った。
「……ホント何なの、この結界」
外側まで解析を走らせたが、そちらまで強固ときた。
こんな嫌がらせとしか思えない部屋に、ここまで強力な結界を張る意味が分からない。
「はぁ、表裏を反転させるだけじゃ無理だわ。ちょっと考えさせて……」
彩鴇は顎に手を当てて考え込んでしまう。
村正は刀を納め、この部屋に入ったときからの疑問を口に出した。
出る方法なら最初に示されているはずだ。
「出された課題をこなすのではダメなのデスか?」
「なっ?!」
途端に彩鴇が真っ赤になる。
「い、い、いいわけないでしょ!!こんな怪しい部屋に閉じ込められて、その上こんなふざけた課題!こなせば出られるってことは、人的か機械的に監視されてるってことじゃない!」
何されるか分かったもんじゃないと一気にまくし立てる。
しかし、村正はなぜ彩鴇がこうも慌てているのか、見当もつかない。
「……ところで、se〇って何デス?」
「知らないとは思えない発音なんだけど」
彩鴇は呆れてがくりと肩を落とす。
課題の内容が分からないのなら、その動じない姿勢も納得だ。
ひとりで慌てていたのがバカみたいに思えてくる。
教えるべきか、しかし彩鴇はこういう教育が得意ではない。むしろ苦手だ。
悶々としていると、課題を表示していたモニターが切り替わり、映像が流れ出した。
若い男女がベッドの上で組んずほぐれつ、お互い睦言を囁きながら、だんだんと服まで脱ぎ始める。
皆まで言わずともそれが何の行為なのか、彩鴇には分かる。
一方で村正は、目を丸くしてその映像を見ていた。
「Oh、なんとも情熱的デスね。これがセッ」
「見るなーっ!!な、なんでこんなのが流れるのよ!?」
彩鴇が勢いよくモニターを遮った。
茹でダコのように首まで真っ赤になっている。
しかし、音声までは消せない。
女性の高い喘ぎ声とそれに呼応するように男性の熱い吐息の音まで聞こえてくる。