第11章 ○○しないと出られない部屋【千子村正】
前略、千子村正と奇妙な部屋に閉じ込められました。
部屋の中にはベッドとモニターがひとつ。
モニターには顔を覆いたくなるような課題が出題されている。
『セッ〇〇しないと出られない部屋』
「……ふざけてるの?」
そもそも本当に出られないのか、扉を調べると、鍵をかけられているようだ。
村正の手も借りたが、扉はびくともしない。
「開きまセンネ」
「物理的な鍵なら開けられるかも。ちょっと扉を解析してみるわよ」
普段ならば解析はこんのすけに頼むのだが、いないし呼べないので、彩鴇がやるしかない。
手早く解析術式を組み上げると、さっそく扉をはじめ、部屋全体に解析し始める。
解析の様子を初めて見る村正は、興味深そうに彩鴇を覗き込んでくる。
「……出られそうデスか?」
「難しいわね。結界に閉じ込められているみたい。しかもこれ、内側からだと相当な衝撃がないと壊れない。とてもじゃないけど、正攻法では破れないないわ」
もちろん正面切って破れないからといって諦める彩鴇ではない。
次は結界に脆い部分がないかを確認していく。
しかし、壁、床、天井、弱点になり得る結界の起点らしきものすら見つからない。
「なんて緻密な結界なの。才能の無駄遣いにも程があるでしょ……!」
あまりの完璧さに頭を抱えたくなった。
こうなれば、こちらも奥の手を使わざるを得ない。
「この結界術式にハッキングして、構造を書き換えるわ」
「そんなことができるのデスか?」
「もちろん、私ひとりじゃできないわ。手伝い札を何枚か持ってて良かったわよね」
いざという時のためにいつも持ち歩いていた手伝い札が役立った。
この札の霊力を使えば、結界術式へ侵入・書き換えも可能だ。
それに構造の書き換えといってもそんな大それたものではない。
「この壁の結界の表裏を入れ替えるの。こういう結界は両面とも強固なものは少ないからね。でも、そんなに長くは保たないだろうから、私が合図したら、全力で打ち込んで」
「実力行使ということデスね」
村正も承知し、すらりと刀を抜く。