第10章 初志【歌仙兼定、今剣】
〈初めての口喧嘩〉
「本日からこの本丸を拠点に活動していただきます」
「でっか!」
「立派なものだね」
こんのすけに案内されたのは日本家屋の大きな屋敷だった。
歌仙は感心しているが、彩鴇は唖然としている。
彩鴇がこんなに広い屋敷を見たのは、生まれて初めてだ。
玄関だけで小さな部屋が作れそうな広さ、大人数が入れる食堂、大浴場まである。
「こちらが主さまの執務室になります」
「広いわねー、でも事務用品を置いて布団も敷くとなるとこのくらいか」
「寝室は別にありますよ?」
「……はい?」
こんのすけの言葉をすぐに理解できなかった。
まだまだ本丸の案内は続く。
「こちらが寝室になります」
「私は一部屋あれば十分よ?!」
案内された寝室は執務室よりも少し狭い程度か、それでも彩鴇からすれば、広すぎるくらいだ。
こうも広いと逆に落ち着かない。
「家具がほとんどないから余計に広く見えているんだと思うよ」
そわそわとしている彩鴇の肩に歌仙がポンと手を置いた。