第10章 初志【歌仙兼定、今剣】
翌日ー
彩鴇は朝食もそこそこに、計器を片手に鍛刀部屋、手入部屋、台所や畑、本丸の隅々まで調べてまわる。
初めて鍛刀した短刀である今剣も興味津々な様子で彩鴇にくっついてきた。
「あるじさま、それはなんですか?」
「これは霊力測定器よ」
この計器で本丸の霊力消費が激しい場所を確認していく。
本丸を維持するための霊力を少しでも節約すべく、どの程度までなら消費霊力を抑えても支障が出ないかを調べるためだ。
「む、むずかしそうです……」
「そんなことないわ。この調査をもとに本丸維持のための結界術式を少しいじるだけだもの。遡行軍との戦いよりもずっと簡単よ」
計器には複数の数値が示され、彩鴇はそれを記録している。
結局計器の見方も分からなかった今剣は、歌仙との手合わせのため、途中で道場へ行ってしまった。
一通り調査した後は術式の研究だ。
太陽光や火力を霊力に変換する術式
霊力を物体に込め、それを必要なときに取り出す術式
本丸維持に使う霊力の余剰を集める術式
可能であれば、より効率的な変換術式
執務室に戻った彩鴇の手元には昨日の任務報酬でもらった手伝い札がある。
手始めに一番ヒントの多そうなこの札の術式を解析してみよう。