第10章 初志【歌仙兼定、今剣】
こんのすけに案内された執務室へ戻り、本日の任務報酬を確認する。
その中には手入れのときにこんのすけが使っていた手伝い札もあった。
自分の霊力だけでは時間がかかっていたであろう手入れを一瞬で終わらせた木札。
「こんのすけ、この手伝い札ってどんな仕組みになってるの?」
「作成方法は機密事項になっていますが、中に霊力を保存し、使う時にそれを解放して主さまの霊力を補強します」
なるほど、霊力の電池みたいなものか。
彩鴇が考え込む中、業務は終了とばかりにこんのすけは退室する。
「もう行きますからね。ごゆっくりお休みくださいませ」
「うん、おやすみ……」
生返事をしつつ、彩鴇の頭の中は手伝い札のことでいっぱいだった。
似たようなものを作れば、このすずめの涙のような霊力も恒常的に補強できるかもしれない。
さっそく分析してみよう。
一方の歌仙は、彩鴇が今日の敗戦を気にしているのではないかと心配していた。
自ら戦場に出ていないとはいえ、戦闘の様子は通信を通して見ていたはずだ。
まだ二十そこそこの女子である主には酷であったのではないか。
油揚げをもらいに来たこんのすけに尋ねてみるが、返ってきた答えは冷徹なものだった。
「新しく就任された審神者の方には、同様のものを受けていただいております。皆様一度は敗戦を経験しておりますよ」